きくてぃブログ

〜理学療法士の日常の全て〜

extension lag(エクステンション・ラグ)が起こる原因について。

f:id:chikugiyuki:20190120190326j:plain

エクステンション・ラグをご存知ですか?

膝関節の整形外科疾患の中では重要な概念であります。

歩行時や起立時の安定性に関与することがわかっています。

 

そもそもエクステンションラグというものは

膝関節最終伸展(約10度)を行えるか

他動ではできても自己で可能であるか

できない角度があればその分「ラグがありまあす。」ということになります。

 

原因は様々なことが言われてきています。

 

以前は内側広筋の筋力低下・機能不全とまとめられることが多かったですが、

現在では腫脹や神経学的な内容が主に言われています。

 

lag が起こる原因として以下のようなものがあります。

評価の参考にしてみてください。

 

 

大腿四頭筋の筋力低下(内側広筋)

以前の情報とはいえ、現在でも原因の1つとして考えられています。

 

内側広筋が短縮位であるため、膝伸展位での収縮不全があります。

*内側広筋に麻酔をかけてもlagはおこることがわかっています。

 

 

2拮抗筋であるハムストリングスの収縮or短縮

ハムストリングスが収縮や短縮していると膝関節は屈曲位になります。

伸展を妨げる方向に働きますから、伸びなくなります。

伸びなくなるためラグが生まれます。

 

3腫脹・水腫による神経生理学的抑制

現在では、主に考えられています。

手術をすると炎症反応として腫脹が起こります。

 

ラグが起こる伸展位である時、関節の圧が高まります。

大腿四頭筋に抑制がかかります。

 

つまり...

 

関節浮腫が認められる場合、

膝関節伸展に伴い関節内圧が上昇、

関節包が伸張され関節内受容器or知覚神経が興奮し、

脊髄反射によって大腿四頭筋の抑制が起こります。

 

Kennedyら(1982)は

生理食塩水を関節包内に注入して大腿四頭筋に反射性抑制がかかる。

損傷された関節や炎症性関節に作用する筋の筋力低下を関節原性筋萎縮と呼ぶ。

 

 

4痛み(反射性の抑制)

疼痛がある場合、屈曲反射が起こります。

屈曲反射が起こると反射性の筋出力抑制が生じます。

すると大腿四頭筋の活動が抑制されます。

 

5筋原線維などの廃用性変化-筋線維異常

(筋原線維の変性、サルコメアの短縮 説)

不動や廃用症候群によって

筋線維が変性することがあります。

この変性は

・筋原線維の配列の乱れ

・Z帯の断裂や蛇行

・筋節長の短縮や伸張性の低下

を引き起こします。

 

結果として、

「静止張力」と「収縮張力」

の両方が低下します。

すると、

膝関節伸展位での大腿四頭筋の収縮

を行うことが難しくなります。

 

6縫工筋と大腿筋膜張筋の過活動

膝関節を手術された方では膝関節周囲の筋肉が働かず、

股関節周囲からの筋肉に依存することで代償動作を行なっている場合があります。

 

膝関節を安定させるために縫工筋や大腿筋膜張筋の働きを強めている場合があります。

 

7膝蓋骨の可動性の問題

ラグが起こっている方には脛骨大腿関節の問題の他に

膝蓋骨の動きが制限されている方が多いです。

 

膝蓋骨の動きが制限される理由として

膝蓋下脂肪体や膝蓋上のうなど様々な理由が存在しますが、

制限されることで最終伸展は行えなくなります。

 

8皮膚の可動性の問題

9手術時の削り角度

10術前の屈曲拘縮

 11ラグというよりも膝伸展制限。

しかし・・・

ラグがあったからと言って必ず膝折れが生じるわけではありません。

機能的膝伸展機構という代償機能があります。

荷重下で大臀筋、下腿三頭筋、ハムストリングスが働くことで

膝関節を後方へ引き伸展させます。

そうすることで膝折れを起こさせないようしているわけです。

 

 

まとめ

膝関節の安定を得るために、最終伸展まで行えることは大切です。

理由も様々ありますがラグが起こることで将来その方に問題となってくることは明らかです。

しかしラグだけを改善することが目的となってしまってはいけません。

重要ではありますが、ラグ改善を目標としないよう

評価していくことが大切でしょう。

 

chikugiyuki.hatenablog.jp