きくてぃブログ

〜理学療法士の日常の全て〜

膝蓋下脂肪体:疼痛増幅装置

はじめに

裏付け

書籍と論文を元に構成されたものです。

 

膝関節の悩み

臨床で膝の痛みに出会うことはよくあることだと思います。

 

患者さんから「膝のお皿の下が痛い」「膝の両サイドが痛い」

またセラピスト側では「膝関節のラグが残ってしまう」や「しっかりと曲がらない」

ということがあります。

 

「ぐりぐりぐり」と。

お皿や脂肪体を動かしていくことで痛みが取れることを経験します。
これをに身につけると、即時効果を出すことができ、患者さんと信頼を得やすくなります。

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ちなみに痛みや制限が出てくる理由としては次のようなものがあげられます。

疼痛、皮膚の癒着、関節包の癒着、筋・筋膜短縮、
筋緊張亢進、関節内運動障害、腫脹、浮腫、骨衝突

などがあげられます。

 

特に膝関節疾患の痛みの好発部位として、次のようなものがあります。

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膝関節疾患で疼痛を生じやすい部位

今回はこの中の膝蓋下脂肪体に着目しお伝えします。 

本編

そもそも膝蓋骨周囲の構成は?

可動性障害を考える上ではPF関節、FT関節とそれぞれ個別に考えていく必要があります。

膝蓋骨の周囲には筋だけでなく、様々な軟部組織が存在しています。

その軟部組織の柔軟性の低下がPF、FT関節の可動性低下に繋がり、膝関節の運動を妨げます。

 

膝蓋骨周囲にどのような軟部組織が存在しているかを把握することで、

膝蓋骨の動きが制限される方向を捉えるため重要となってきます。

膝蓋下脂肪体とは

膝蓋骨下部の膝蓋靭帯の深層に存在し滑膜で覆われた脂肪組織です。

膝蓋腱の後方でありと半月板の前方に位置しています。

疎性結合組織であるため、血管や神経が豊富に存在しています。

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①膝蓋下脂肪体

 主な役割は、

膝の円滑な屈曲、伸展を行うための衝撃緩衝作用と潤滑作用があります。

膝関節運動時の形態の変化

膝関節伸展時には膝蓋骨下方に位置しています。

膝蓋下脂肪体は屈曲とともに、膝蓋靱帯により後方に押し込まれて、

膝蓋骨とACLとの間に変位します。

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膝蓋下脂肪体は屈曲時には滑り込む

 膝関節完全伸展位では脂肪体の体積は最も小さくなります。また最大屈曲時も体積は小さくなります。

膝関節屈曲角度が大きくなればなるほど、膝蓋骨は関節内への圧迫ストレスを増大させますが、

柔軟性がある膝蓋下脂肪体であればこの圧力を形態変化させて緩衝しています。

 

膝蓋下脂肪体の体積と内圧とには関係があります。

膝蓋下脂肪体の体積が大きい時には内圧が低く、縮小した時には内圧は高くなっています。

特に膝関節完全伸展位では体積は最も縮小し、内圧は屈曲1.5度で最大値を示します。 

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体積と内圧との関係

特に階段の降段時やしゃがみこみ時に疼痛が生じます。

これは体積の縮小した時期、内圧が上昇した時期と一致します。

 

そして組織に作用する圧力と疼痛とには非常に密接な関係があります。

 

膝OAと膝蓋下脂肪体の関係

関節軟骨がすり減ると、軟骨の破片が関節内に浮遊します。

すると膝関節の滑膜(関節液分泌の役割)を刺激します。

刺激を受け炎症が起こり、滑液が大量に産生されます。

「関節に水がたまる」という状態になります。

 

炎症の影響や関節内圧の上昇、破片の刺激によって痛みが生じます。

 

膝OAでは関節内の炎症が波及することで、

膝蓋下脂肪体の線維化(硬化)が生じます。(1つの要因として)

 

線維化すると膝関節の動きに対して十分に緩衝ができません。

また膝蓋骨の近位移動制限が生じます。

線維化することで内圧が高くなります。

 

線維化し膝蓋下脂肪体が十分に変位できないでいると

大腿四頭筋の収縮に伴う膝蓋骨上方の動きや半月板の前方への動きを阻害します。

高い活動が求められることで膝前面に疼痛が生じます。

 

この膝蓋骨の制限によって内側広筋の十分な収縮距離が得られなくなります。

その結果extension lagが改善されず、膝関節不安定性の残存に繋がります。

 

評価方法

ではこの膝蓋下脂肪体への評価はどのように行なっていくべきでしょうか?

あげられるのが次のテストです。

やっている内容はどちらも内圧を上昇させるという意図のテストです。

 

・Jasonの疼痛誘発テスト

・Hoffaテスト

 

軽度屈曲位で膝蓋靱帯部(内外側)を前方より圧迫します。

この時点では疼痛はありません。

圧迫したまま他動的に膝関節を伸展すし疼痛誘発されると陽性です。

治療方法

評価方法の通りに圧迫を繰り返し柔軟性を確認すること・柔軟性を確保していくことがそのまま治療となります。

特に硬くなってしまっている場合は内圧が低くなる屈曲位から始め

徐々に伸展位で動かせるようにしていきます。

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治療方法

終わりに

今回お伝えした内容をまとめます。

・膝蓋下脂肪体には衝撃緩衝作用と潤滑作用がある

・形態変化することで正常の関節の動きとなる

・線維化が起こると形態変化できない

・内圧上昇により疼痛が出現する(特に完全伸展位、屈曲1.5度)

・柔軟性確保が大切

 

余談ですが、

「この10年でTKAは半分減るんじゃないか?」と言われています。

 

その理由として

現在、整形外科医は関節の手術を中心に行なっています。 

 

しかし今後(現在進行形で)

麻酔科医は整形外科分野で筋膜リリース(Facia)・ハイドロリリース

「ハイドロリリース:エコーガイド下に生理食塩水や局麻剤等を用いて、Fasciaの癒着を剥がし、痛みや機能改善を図る手技」

 

放射線科医は整形外科で血管を除去

痛みに由来している細い血管を除去することで痛みを軽減・改善

 

今後の医学の進歩が期待されますね!

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