「糖尿病にはなぜ運動が必要なのか」(動画あり)
本日私は「糖尿病にはなぜ運動が必要なのか」ということについてお話しいたします。
目次
なぜ私から聞くべきなのか?
入院患者さんの糖尿病運動指導を実際に行なっています。
指導を行なっているので、実体験としてお伝えでき、
実際に病院で行なっている指導の内容をお伝えすることができると思います。
「糖尿病に運動がいいというのは聞いたことがあるけど、
どういうことをすればいいのかわからない」
という悩みを持った方がいれば必ずご覧ください。
そもそも糖尿病は?
現在「5人に一人は糖尿病である。」
というほど罹患している人の割合の多い病気となりました。
その糖尿病ですが、
糖尿病は以下のように定義されています。
「インスリン作用の不足に基づく慢性高血糖症状を主徴とする代謝疾患群」
糖尿病で大切なインスリンの効果を下図に載せておきます。
インスリン作用不足
インスリンの作用が不足してくる原因として2つあります。
・分泌障害
・インスリン抵抗性の悪化
インスリンの効きが悪くなります。
本来の貯蔵スペース以外に糖が溶け込んでしまうことによりインスリンが力を発揮出せない状態です。
脂肪肝や脂肪筋などが原因のこともあります。
運動の効果
薬物療法・食事療法・運動療法が糖尿病治療の3本柱となっています。
その運動療法の効果として以下のものがあります。
・血糖値を下げる効果(急性・慢性)
・体重を減らす効果
・心臓や肺の働きを強化する効果
・血圧を下げる効果
・インスリンの効き目を良くすることができる
(下肢筋力とインスリン抵抗性には負の相関がある。)
・バランス能力を改善することは転倒の予防につながる。
筋力と転倒には相関がない。バランス能力と転倒は相関がある。
(握力と片足立位・過去1年の転倒歴)
・予後が良くなる、QOLが良い
など他にも多くの効果が言われています。
筋力やバランスと関連することから、最近では糖尿病は運動器疾患であるとも言われています。
また様々な病気の出発点は肥満であることから、体重を減らすこと自体が様々な病気の予防につながるとも言われています。(メタボリックドミノ)
どういう運動をすればいいのか?
そもそも運動はどういうイメージ?
皆さんはどういうイメージを持たれているでしょうか?
きつい?激しい?疲れないとだめ?
全くそんなことはありません。
まずはベッドから離れるだけでも1ステップクリアです。
「動かない」ことをまずは改善していきましょう。
どういう運動をすればいいの?
様々な良い運動はあります。
自分ができそうな、続けられそうな運動を選ぶことが良いでしょう。
一例を紹介します。
ウォーキング
踵上げ
スクワット
お尻上げ(ブリッジ)
SLR 10回×3セット
立ったまま腕立て
どれだけすればいいの?
目標値をご紹介します。
しかしこれに達しないから効果がないというわけではありません。
「運動を1分でもする」ということは「運動を全くしない」より100%良いです。
・1日20分以上(筋肉への糖の取り込みは運動開始後10分で有意に上昇)
・1週間150分以上実施する(1日約21分計算)
・2~3日に1回は最低でも実施する。
どのくらいの強さですればいいの?
運動強度が強すぎるとかえって血糖値が上がってしまいます。
アドレナリンなどの作用によるものです。
そのため「きつい」「楽」のちょうど間くらいの強さでするのが良いでしょう。
人と話しながらできる範囲の強さです。
運動をするときの言い訳
運動の効果はご紹介した通りです。
しかし運動がいいとわかっていてもできないのが人間です。
その運動のできない理由を挙げてみます。
運動する時間がない
仕事が忙しく時間がない方。
しかし論文で報告がありました。
「細切れ運動でも血糖値は改善する。」
30分を1日一回より100秒を一日18回の方が良い血糖値低下効果が出た。
トイレに行った後、テレビを見てる時、朝起きた後など細切れ時間は多くあると思います。
これまで運動をしたことがない
運動に自信がないことで運動しないという方。
そんな方は
「運動をしたことがない」
要するに今まで「効果的な治療の1つを実施していなかった」
これはチャンス!だと考えています。
腰や膝が痛い
運動をするとどこかしらが痛むから億劫になるという方。
外出も控え、動かないことを選んでしまいがちです。
しかしそれこそ痛みを悪化させる原因ともなってしまいます。
腰痛に関しては欧米の腰痛治療ガイドラインにおいて「運動療法が有効である」という明確なエビデンスが報告されています。
痛みが出ない運動。
歩くのが大変なら、座って。
座ってが大変なら寝て。
そうして行なってみてください。
体力に自信がない
仕事で疲れてきて、また運動をしなければいけないのかという方。
仕事が肉体労働でしんどければ、まずはストレッチから
体が楽になる感覚を覚えてもらうことが大切です。
また、睡眠不足であれば
就寝3時間前に有酸素運動を習慣化させると解消に繋がります。
まずやってみてください。
運動をやらない理由はありません。
運動の効果は誰しもが頭ではわかっているけれども、実践できないのが現状です。
ぜひ少しでも挑戦してみて、そのトライを共有しましょう!
少しの実践が大きな効果を生み出します!