胸腔ドレナージ:胸水を抜く
胸腔とは?
胸腔は胸壁・縦隔・横隔膜によって囲まれた空間であり、
左右の肺がそれぞれ左胸腔、右胸腔の中に収まっています。
胸腔は体外とは隔絶されており、
横隔膜・胸壁の運動によってその容積が大小に変化することによって、
左右の肺が受動的に膨張・縮小して換気が行われます。
肺自体は表面の肺胸膜の弾性のために
常に縮小しようとするため、胸腔の中は常に陰圧です
(安静時で約-5cmH2O)。
どんな人にやるの?
①胸腔内に空気・液体が貯留した場合
(気胸・胸水)
②開胸手術や胸腔鏡手術を行った場合
(肺切除術・食道切除術・縦隔腫瘍、胸膜腫瘍の切除術、心臓手術など)
どんな目的でやるの?
肺の再膨張、術後出血、肺からのエアリーク、リンパ液漏出の監視
正常な胸腔内には空気は存在せず、
ごく少量の胸水が存在するだけですが、
種々の疾患のために胸腔内に空気や液体が貯留することがあります。
また、開胸手術や胸腔鏡手術を行った場合には、
閉胸後にも胸腔内に空気が遺残したり、血液やリンパ液が貯留する可能性があります。
胸腔内に気体や液体が貯留すると、
肺が圧排され、容積が小さくなり、
十分な換気が行われなくなるために呼吸機能低下となる可能性があります。
また、術後に胸腔内に出血があった場合、外から出血の程度を把握するのは困難です。
すなわち胸腔ドレナージ、特に手術後に行う胸腔ドレナージは、
①開胸操作によっていったん虚脱した肺の再膨張のため、
②胸腔内術後出血、肺からの空気漏れ(エアリーク)、
その他リンパ液などの漏出の監視のために行うものであり、
該当する手術では手術中に胸腔ドレーンを必ず挿入しなければなりません。
どういう方法なの?
前述の通り、胸腔内は陰圧であるため、
腹腔ドレナージのように、
ただ排液チューブを挿入しただけでは外界から胸腔に空気が逆に流入し、
かえって肺が虚脱してしまいます。
このため、常にドレーンチューブに陰圧をかけておく必要があります。
または、胸腔内に外界から空気が流入しないような工夫が必要です。
このため、通常は胸腔ドレーンに持続陰圧吸引装置をつなげます。
吸引圧は通常10cmH2O程度とする。
3つの瓶が一体となったディスポーザブル製品が市販されています。
ドレーンは、手術中閉胸前に比較的太いもの(24Fr以上)を留置します。
どういうリスクがあるのか?
胸腔ドレナージの合併症
胸腔ドレナージの合併症は、
①挿入時の肋間動静脈・肋間神経損傷(血管損傷すれば出血、神経損傷すれば疼痛、感覚異常)
②挿入時先端による肺や心臓の損傷
③ドレーンからの逆行性感染、膿胸が挙げられます。
外す目安は?
ドレーンを2~3時間クランプ後、胸部X線写真で肺の虚脱がみられない場合
胸水:1日量が4mL/体重kg(成人ならば1日200mL)よりも少なくなった場合(ただし血胸・膿胸を除く)
ドレーン抜去の時期は、
原因疾患が治癒し、エアリークや多量の胸水の発生がなくなったときであります。
具体的には、
2~3時間程度ドレーンをクランプしたあとに胸部X線写真を撮影し、
肺が虚脱していないことを確認してから胸腔ドレーンを抜去してもよいです。
胸水については、
めやすとして1日量が
4mL/体重kg(成人ならば1日200mL)よりも
少なくなった場合(ただし血胸・膿胸を除く)
に胸腔ドレーンを抜去してもよいです。