僧帽筋:前鋸筋とのforce couple機構
はじめに
この記事は、医学書籍・医学論文を参考に作成されています。
対象
・筋肉を治療対象とする専門家(理学療法士、柔道整復師、あん摩・マッサージ師、整体師)
・筋肉を学ぶ方
・障害を受けた方
機能
起始:
上部線維 後頭骨上項線外後頭隆起、項靭帯
中部線維 th1~6棘突起
下部線維 th7~12棘突起
停止:
上部線維 鎖骨外側1/3後縁
中部線維 肩峰の内側、肩甲棘上縁
下部線維 肩甲骨棘三角部
神経:
C2~C4、副神経
作用:
肩甲骨の内転と肩甲骨の上方回旋(前鋸筋と共に行う)
上部は肩甲骨挙上、下部は肩甲骨下制の作用をもつ
特徴
僧帽筋上部線維:
鎖骨外側1/3を介して、
三角筋前部線維と互いに引き合う関係となります。(肩関節0度)
僧帽筋中部線維:
肩峰、肩甲棘を介して、
三角筋前部・後部線維と互いに引き合う関係となります。(肩関節90度外転位)
僧帽筋下部線維:
肩甲骨を介して、
三角筋前部・中部・後部線維と互いに引き合う関係となります。(ゼロポジション)
⇨三角筋の収縮効率を高める固定筋となります。
上肢挙上に伴う肩甲骨の上方回旋は、
僧帽筋3つの線維群と前鋸筋による協同運動(force couple)によります。
評価
肩甲骨が外転している場合、
肩甲骨の内転・上方回旋に作用する僧帽筋中部・下部線維の筋力が低下している可能性があります。
また、これらの筋力が低下していると、僧帽筋上部線維や肩甲挙筋の筋緊張が高まっている可能性があります。
中部線維の評価:
腹臥位にて肩関節90度肩甲骨面挙上位で実施します。
肩甲上腕関節は徒手的に固定します。
肩甲骨を内転位に誘導します。⇨その後最大内転位で保持させます。
下部線維の評価:
腹臥位にて肩関節120度肩甲骨面挙上位で実施します。
肩甲上腕関節は徒手的に固定します。
肩甲骨を内転・下制位に誘導し、最大内転・下制位で保持させます。
エクササイズ
促通方法
側臥位で中部線維(外転90度)や下部線維(ゼロポジション)の促通を行う
方向は収縮方向に促通していく
関連疾患
・翼状肩甲骨(副神経麻痺)
僧帽筋による肩甲骨の安定化が失われます。⇨肩関節外転時に著明となります。
(長胸神経麻痺による前鋸筋不全でも起こるため鑑別が必要⇨肩関節屈曲時に著明となる)
・胸郭出口症候群牽引型
僧帽筋の中部と下部線維の筋力低下を認めることが多いです。
・インピンジメント症候群
⇨僧帽筋の筋力低下を主体とした肩甲胸郭関節機能の低下を基盤としたものがあります。
・広背筋損傷
⇨僧帽筋中部・下部の筋力低下が伴います。
筋力低下することで前鋸筋とのforce couple機構が破綻し、
過剰な肩甲骨の外転や早期での上方回旋が生じ、広背筋最上方線維への摩擦ストレスが増大します。