きくてぃブログ

〜理学療法士の日常の全て〜

足関節可動域訓練で大切なこと。~骨折手術後のリハビリでの着目点をまとめてみました~

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手術後リハビリが開始される方がほとんどです。

そんな方に対して「どのようなリハビリを行っていくべきか」

留意点や着目点などをお伝えできればと思います。

 

 

 

主治医からの情報

1 ギプス・シーネ固定・荷重計画

リハビリのオーダーが出ると、

おおよそどのくらいの期間の固定計画をしていて、

荷重はいつ頃からかけていくのか?

が、とても大事になります。

 

主治医の計画に則ってスムーズに退院まで繋げられるように援助します。

この計画から逆算してリハビリのプログラムを考えていきます。

 

 

 

2 ラボデータ

貧血や栄養状態、炎症状態など確認するべき事柄は山ほどあります。

 

リハビリ中に会話の反応が悪くなってくる場合もあります。

なかなか創部の状態が良くならない場合もあります。

 

そんな方を対応している時、

・・・だからバイタルチェックしよう。

・・・だからこれ以上負荷をかけることはやめよう。

リスク管理をすることができます。

 

頻繁に取られるデータではありませんが、

定期的に取ると思われますので、確認は必要です。

 

 

 

3 既往疾患

今回手術となった理由が何なのかはとても大事です。

もし既往疾患の影響であればその疾患を留意していかなければなりません。

 

一例を挙げると、

外出時に転倒して足関節を骨折していたとします。

その転倒の原因が、「透析後の血圧低下による失神により意識消失し転倒」

という場合もあります。

 

なぜ骨折したのか?

リハビリ上何を注意していくべきなのか?

考えておくことはとても重要です。

 

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理学療法的情報・評価

【局所的視点】

1 創部の状態

 創部の状態を観察することは大事です。

 出血がないか、炎症が悪化していないか、痛みが出現していないか

 シーネ固定中は特に創部を観察することをしています。

 

 また状態を観察し、足関節の固定期間を終えた後どの辺りに機能不全が生じてきそうかを予想します。

 

 健側と比べてどれほど浮腫・腫脹があるのかを確認し、

 「可動域訓練禁止」の際にも、癒着を起こさない為にも浮腫を取ることは大切です。

 

 

 

2 転がりと滑り

 足関節は機能解剖学的に距腿関節で距骨が転がりと滑りを見せます。

 

 足関節をギブスで固定された状態ですと、

 足関節の運動感覚が失われてどのように動いていたのかわからなくなることもあります。

 そのため「可動域訓練を開始」となった際には、転がりと滑りを意識して訓練を行うことになります。

 

 この転がりと滑りを引き出すためには、注目点がいくつかあります。

 

 

腓腹筋・ヒラメ筋

 軽度底屈位固定されている場合は短縮している場合があります。

 足関節底屈筋が固定されていると、歩行時の蹴り出しや階段が登りにくくなったりします。

 その為、短縮を改善するためにもストレッチは大切です。

 

脂肪体

 足関節の前方と後方にはfat patと呼ばれる組織が存在します。

 固定期間が存在することで、動く機会が少なくなり固まってきます。

 膝蓋下脂肪体のように、疼痛を感じやすく関節の動きを制限してしまします。

 そのため脂肪体を動かし、可動域訓練を行えるよう柔らかくしておくことは大切です。

 

長母指屈筋

 脂肪体を挟むようにアキレス腱と長母指屈筋は存在しています。

 その為、腓腹筋や脂肪体が硬くなることで、長母指屈筋の動き・滑走が悪くなります。

 滑走が悪いと長母指屈筋の筋出力は低下しますし、

 何より距骨の後方への動きを制限する因子でもあります。

 

 その為、長母指屈筋を動かし滑走をよくしておくことで、背屈方向へ距骨が動きやすいようにしておきます。

 

3 腓骨の開き

 足関節が背屈する際には、脛骨と腓骨の間は広がります

 距骨の解剖からしてみても前方が広いことによりわかるかと思います。

 そして、脛骨と腓骨との間が広がる時には、腓骨は外旋しながら外上方へ移動します。

 小さな動きですが健常者と受傷者では動きが違うことからもわかると思います。

 その為腓骨の動きが制限されるようなことがあると足関節背屈の制限となります。

 

4 皮膚の滑り

 創部受傷することで、手術を行い骨を修復します。

 その際に皮膚から切開します。

 術後は修復していきますが、切開した部分の動きは確実に悪くなります。

 皮膚の動きが悪いと、それだけで突っ張ることとなるので、

 皮膚と内部組織が癒着を起こさないよう、愛護的に滑らせることは大切です。

 ただし、離開させるような刺激はしないよう気をつけないといけません。

 

 

5 足底の筋

 足関節周囲の筋肉は脛骨・腓骨から付着し足関節の骨に付着します。

 特に足底の筋肉は数多く存在しています。

 足趾が動かないことで、筋肉も硬くなりますし、クロスサポートメカニズムも働きづらくなります。

 

 足関節の可動域訓練はできなくても、足底の筋を足趾を動かすことでストレッチすることは可能です。

 機能不全に陥らないように、注意しながら行なっていきます。

 

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【全般的視点】

健側の能力

 足関節を骨折した方において、健側の能力はとても大切になります。

 一定の固定期間では、移乗動作を行なったりや松葉杖歩行を獲得する為には健側の能力が必要不可欠です。

 その為、機能維持向上の為にもリハビリを行います。

 

患側の能力

 足関節を骨折した場合、荷重をかけ始めても受傷前と同様に荷重をかけれるとは限りません。

 また、免荷時に足関節以外の筋力を落とさないようにしなければいけません。

 特に膝伸展筋肉股関節筋肉(外転、伸展筋肉)は大切になってきます。

 

 荷重開始となりすぐ健側と同様に荷重をかけ歩行を行えるように固定期間中から準備をする必要があります。

 

 

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まとめ

足関節の骨折において、着目点は数多く存在します。

ただ「関節可動域訓練を行えばいい」や「筋トレをすればいい」などといった簡単なことではありません。

毎日評価し、変化を追って行くことがとても大切になりますので、念頭に置いてぜひ良いリハビリを行なって見てください!

 

足関節の評価を行う上でも「足部・足関節理学療法マネジメント−機能障害の原因を探るための臨床思考を紐解く」は、とても役に立ちますので参考にして見てください。