きくてぃブログ

〜理学療法士の日常の全て〜

大腰筋:腰椎前弯による腰痛の出現

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はじめに

この記事は、医学書籍・医学論文を参考に作成されています。

対象

・筋肉を治療対象とする専門家(理学療法士柔道整復師、あん摩・マッサージ師、整体師)

・筋肉を学ぶ方

・障害を受けた方

機能

起始:th12~L4椎間板や横突起

停止:
 鼠径靭帯の遠位で腸骨筋と合わさり1本の腱となって大腿骨小転子

 (一般的に腸骨筋と大腰筋は大腿骨頭のすぐ前方で癒合する)

 筋裂孔を経由する

神経:大腿神経

作用:

 ・強力な股関節屈筋で骨盤に対する大腿骨の屈曲と大腿骨に対する骨盤の屈曲の両方を行います。

 ・腰部の側屈

 ・仙骨に対する下位腰椎の屈筋

 ・腰椎の垂直方向の安定装置

特徴

・垂直安定装置:体軸骨格の自然な生理的彎曲維持しながら、ほぼ垂直位で体軸骨格を安定化させる筋機能を表します。

 

・股関節周囲筋の中で唯一腰椎から起始します。

 

・腹直筋のような筋によって骨盤を安定できなければ、腸骨筋は骨盤を前傾させることによって腰椎前弯を増強させます。

 

・大腰筋、腸骨筋共に赤筋線維が白筋線維より約3倍太くなっています。

 

歩行速度との関係性では大腿部の筋肉より強い相関を示しています。

 

陸上競技短距離選手によく発達しています。また黒人男性は白人男性よりも大腰筋が大きいことが報告されています。

 

・高齢者では萎縮しやすいです。

 

腸腰筋レーニングによりバランス機能の改善効果が報告されています。 

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触診

腹部からの触診

「みぞおち」から「ASISと恥骨結合の中点」を結んだ線の臍の高さで確認します。

腹直筋の外側から2、3指を深部に向けて押し込みます。

行き止まったところから内側へ向けます。

activeでの股関節屈曲運動を行ってもらい確認します。

注意点

無理に沈めない様にします。

床方向に沈めてから脊柱方向へ動かします。

手を抜くときもゆっくりにします。

 

評価

・可動域評価 トーマステスト

両側共に股関節屈曲を十分にさせてから検査側を伸展させます。

伸展した股関節の大腿部と床との距離を確認します。

 

・筋力評価

背臥位にて検査する股関節を90度屈曲させてから抵抗運動します。

 

・動作評価 

動作をすることで左右の行いやすさで評価を行います。

寝返り・立位前屈・立位後屈などがあります。

 

・鼠蹊部で触れることはできますが、停止部よりも起始部で硬結が発生しやすいです。 

 

機能不全の改善

実施する側を股関節軽度屈曲位にします。

触診をした位置で深呼吸を5回ほど行ってもらいます。

※女性の生理3日目まで、腹部のOPE直後、婦人科系疾患には注意します。 

エクササイズ

・Active ALR

お腹を凹ませた状態で(draw in)70度前後の高さに下肢を挙上します。

 

・ストレッチ

パピーのポジションになり、伸張側ではない方を股関節屈曲90度、外旋位にします。

ストレッチする方はハムストリングスを使い膝関節伸展し、つま先を立てます。

ハムを使うことで坐骨を引っ張り後傾して、前傾を防ぎます。

骨盤は浮いても構いません。

 

関連疾患

・腰部脊柱管狭窄症:LCSに見られる馬尾性間欠跛行では拘縮による二次的な腰椎の前弯が下肢症状として出ている可能性があります。

 

腸腰筋の内圧上昇:腫れ、過緊張、拘縮などによる

 

余談:

大腰筋は右が痛い人が多い様に感じます。

それは地球が自転しているから?とも。

側湾症が右に多い理由もその可能性があります。

 

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歩行分析の見るべき視点:3つのポイント

 

悩み

歩行を見ていくときに

「どこを見て行けばいいのかわからない」という方は多いと思います。

学生や若手であれば、

「早くてわからない」「着目点が多すぎる」ということとなるでしょう。

そんな方へ歩行のポイントをお伝えします。

すぐ臨床に役立つこともできますのでぜひご覧ください。

 

見る視点 

歩行において見る視点はたくさんあるかと思います。

立脚期、遊脚期、頭、肩、背骨、股関節、骨盤、膝、足

あげたらキリがありません。

 

その中で特に見ていくことが大切となってくるのは以下の3つです。

疾患固有の場所横揺れやテンポの崩れ立脚期です。

 

疾患固有の場所は、まず局所を見ることです。

何かが必ず起こっています。

 

そして横揺れやテンポの崩れです。

前額面上では横揺れ、矢状面上ではテンポが大事になってきます。

 

そしてここからは、

立脚期のポイントをお伝えします。

 

立脚初期ポイント:踵接地の重要性 

第一に大事なのは立脚期、特にICです。

踵がついた瞬間から上行性運動連鎖が始まります。

そのため距骨下関節の回内・回外はとても重要となっています。

 

回内

・衝撃吸収 足部剛性↓

・立脚初期では前方移動制限

・ショパール関節可動性↑

・内側荷重

 

回外

・安定化 足部剛性↑

・立脚初期では前方移動促す

・ショパール関節可動性↓

・外側荷重

 

立脚中期のポイント:外側縦アーチ

次に、立脚中期ではアーチ構造が大事です。

特に外側縦アーチが大事になります。

 

外側縦アーチを作るために

・立方骨パッド

・小指外転筋のリリース

・踵立方関節のモビライゼーション

・5列の底屈方向へのモビライゼーション

・距舟関節の回内方向へのモビライゼーション

・小指側の筋力トレーニン

 

特に小指側、立方骨周囲の軟部組織のリリースは重要です。

 

立脚後期のポイント:MTP関節伸展30度 

立脚後期では次のポイントが大事となります。

・MTP関節伸展30度

・距舟関節の外がえし

・1列の底屈

・距骨下関節の回外

 

立脚中期の時点で

・下腿三頭筋が十分な柔軟性を持っていること

・下腿前傾できる足関節背屈可動域10度以上あること

これがないと後期に移ることができません。

 

立脚後期でMP関節が伸展して蹴り出すことができると、

歩幅が増加します。

すると

股関節屈筋群の負担が軽減することで

体幹の回旋ストレスを軽減させることが可能です。

 

終わりに

どんなときも歩行時は必ず足部が床と接地しています。

そのため足部の機能低下が起こるだけでも、歩行を行いにくい状況となってしまいます。

足部の機能低下を防ぐためには、

・裸足で歩く

・足指に手指を入れる

・硬いボールでグリグリする

など常日頃から心がけておくことは大切になってくるでしょう。

僧帽筋:前鋸筋とのforce couple機構

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はじめに

この記事は、医学書籍・医学論文を参考に作成されています。

対象 

・筋肉を治療対象とする専門家(理学療法士柔道整復師、あん摩・マッサージ師、整体師)

・筋肉を学ぶ方

・障害を受けた方

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機能

起始:

 上部線維 後頭骨上項線外後頭隆起、項靭帯

 中部線維 th1~6棘突起

 下部線維 th7~12棘突起

停止:

 上部線維 鎖骨外側1/3後縁

 中部線維 肩峰の内側、肩甲棘上縁

 下部線維 肩甲骨棘三角部

神経:

C2~C4、副神経

作用:

肩甲骨の内転と肩甲骨の上方回旋(前鋸筋と共に行う)

上部は肩甲骨挙上、下部は肩甲骨下制の作用をもつ

 

特徴

僧帽筋上部線維:

鎖骨外側1/3を介して、

三角筋前部線維と互いに引き合う関係となります。(肩関節0度)

 

僧帽筋中部線維:

肩峰、肩甲棘を介して、

三角筋前部・後部線維と互いに引き合う関係となります。(肩関節90度外転位)

 

僧帽筋下部線維:

肩甲骨を介して、

三角筋前部・中部・後部線維と互いに引き合う関係となります。(ゼロポジション)

三角筋の収縮効率を高める固定筋となります。

 

上肢挙上に伴う肩甲骨の上方回旋は、

僧帽筋3つの線維群と前鋸筋による協同運動(force couple)によります。

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評価 

肩甲骨が外転している場合、

肩甲骨の内転・上方回旋に作用する僧帽筋中部・下部線維の筋力が低下している可能性があります。

また、これらの筋力が低下していると、僧帽筋上部線維肩甲挙筋の筋緊張が高まっている可能性があります。

 

中部線維の評価:

腹臥位にて肩関節90度肩甲骨面挙上位で実施します。

肩甲上腕関節は徒手的に固定します。

肩甲骨を内転位に誘導します。⇨その後最大内転位で保持させます。

 

下部線維の評価:

腹臥位にて肩関節120度肩甲骨面挙上位で実施します。

肩甲上腕関節は徒手的に固定します。

肩甲骨を内転・下制位に誘導し、最大内転・下制位で保持させます。

 

エクササイズ 

促通方法

側臥位で中部線維(外転90度)や下部線維(ゼロポジション)の促通を行う

方向は収縮方向に促通していく

 

関連疾患 

・翼状肩甲骨(副神経麻痺)

僧帽筋による肩甲骨の安定化が失われます。⇨肩関節外転時に著明となります。

(長胸神経麻痺による前鋸筋不全でも起こるため鑑別が必要⇨肩関節屈曲時に著明となる)

 

胸郭出口症候群牽引型

僧帽筋の中部と下部線維の筋力低下を認めることが多いです。

 

・インピンジメント症候群

僧帽筋の筋力低下を主体とした肩甲胸郭関節機能の低下を基盤としたものがあります。

 

・広背筋損傷

僧帽筋中部・下部の筋力低下が伴います。

筋力低下することで前鋸筋とのforce couple機構が破綻し、

過剰な肩甲骨の外転早期での上方回旋が生じ、広背筋最上方線維への摩擦ストレスが増大します。

 

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【糖尿病】バランスが悪くなっていませんか?

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肩関節との関係性(肩甲骨の下方回旋)

①そもそものアライメントの確認

 肩甲骨のアライメント

 上角:th2棘突起

 下角:7~8肋骨の高さ、th8

 棘突起と内側縁の距離:おおよそ6cm(3横指)

 肩甲骨の内側が気持ち上方回旋しているのが大事

 

肩甲骨の内側縁で下部が上部よりも内側にあると、下方回旋していることとなります。

②肩甲骨が下方回旋しているとどうなるのか?

そもそも上方回旋する筋は僧帽筋下部線維(=呼び鈴運動)です。

僧帽筋下部線維が働いて棘上筋が働き骨頭が求心位となります。

 

僧帽筋下部線維が働いていないと、棘上筋が働けず、肩甲骨が下方回旋してしまいます。

肩甲骨が下方回旋していると骨頭が求心位に保たれません。

 

すると、上方の関節包が緩んでしまうので骨頭が落ちます。

落ちたものは落ちたままにはならないので、代償が効いてきます。

骨頭を上に引っ張り上げる筋肉(=上腕二頭筋)のトーンが上がります。

なので、片麻痺の患者さんはどんどん上腕二頭筋のトーンが上がっていきます。

 

なので肩甲骨の位置を上方へ誘導していくことが大事です。

 

インピンジメントはこれで起こります。

棘上筋が使えなくなるのは肩甲骨が下方回旋しているからです。

棘上筋がきかないから骨頭が上につきあがり棘上筋が挟み込まれてしまうようになります。

 

インピンジメントが進む道は

肩峰下滑液包炎や棘上筋の断裂が起こります。

 

また三角筋が硬くて上に引っ張られると、肩甲骨外転位になります。

肩甲骨を下方回旋させて戻してしまうこととなります。

 

三角筋が硬いことで内転できないことになります。

内転できないと、いつも肩甲骨を下方回旋させて上腕二頭筋のトーンをあげてしまいます。

そのため、三角筋を緩めて、内転位で挙上できることが大切です。

 

僧帽筋下部線維

scaplaplane45度上で上腕骨を外転に抵抗を与えた時、

上方回旋位で固定できないと(下方回旋してしまう)僧帽筋下部線維が効いていない印となります。

 

ちなみに棘下筋は硬くなりやすい筋肉です。

硬くなることで骨頭が前方に変位してしまいます。

硬いと水平内転したときに、肩甲骨内側縁が浮き出てしまうこととなります。

棘下筋、後方関節包が硬いと僧帽筋下部線維が働かなくなりますが、

まずは、棘下筋、後方関節包を緩めていくことが大事です。

 

レーニングする際にはローテータカフ全部をトレーニング行います。

正しいアライメントができたところでやらないとカフのトレーニングを行わないと意味がないです。

 

おまけ

1.肩甲骨はがし

肩甲骨の内側縁から指を入れていき剥がしていきます。

そのときに肩峰が動いているのを確認します。

特に特に肩鎖関節が動くのを確認します。

 

全体を見ていく順番としては、「第二肋骨⇨鎖骨⇨肩鎖関節」の順で見ていくのが良いでしょう。

 

2.運動

はじめの運動するときは、肩のscaplaplane上を動かしていく

そうすることで上腕骨頭大結節が突っかからずに通ることができます。

 

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