きくてぃブログ

〜理学療法士の日常の全て〜

ステップ動作を用いて立脚後期を可能にする方法(動画あり)

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ステップ動作の方法です

詳しくは「どうすればいい?ステップ動作のやり方。」でお伝えします。

 

 


皆さんは歩行をみていく時にどこからみていきますか?

浮いている時間(遊脚期)を見るよりも、支える時間(立脚期)を見ることが多いと思います。

患者さんでよくいるのが立脚後期が消失してしまっている患者さん。

それは股関節伸展できない円背姿勢であったり、麻痺で思うように動けなくなってしまったり様々な理由があると思います。

今回は立脚後期を可能とするために、どういう方法を用いていくと誘導できるのかお伝えします。

次の3部構成でお伝えします。

目次

 

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 歩行とは歩行速度が大切

そもそも歩行をよくすると何がよくなるのか?についてお話していきます。
歩行速度の改善がQOLを改善させる

・快適歩行速度を速くするためには最大歩行速度を速くする練習が必要

歩行速度を速くするためにはMAXスピードが速くなれば速くなります。そのためには練習の中でMAXスピードを出していく練習も必要です。意識せず単純に歩く練習をしている時、患者さんは必ず安定して安心して歩ける歩行速度を選択します。せっかく私たちが一緒にいるのですから、無理をさせない範囲でMAXスピードを出す練習をする必要があるでしょう。スキームを作っていくイメージです。

 

・患者の生活範囲は歩行速度(快適歩行速度)により影響される。

文献により報告されています。歩行速度が向上するとそれだけ短時間で歩ける距離が増えます。すると距離を伸ばすことができるので行動範囲が広がります。すなわち選択肢の幅を広げる事にもつながるので生活範囲が広がります。


では歩行速度を上げていくためにはどのような点に注目していくことが良いのでしょうか?

速度向上のためには推進力が必要
・麻痺足の推進力が大きいほど、歩幅の対称性が高い

歩行速度を上げていくためには推進力が必要です。脳卒中により片麻痺が残っている方がいます。麻痺足の推進力は著名に低下し左右非対称な歩行となってしまいます。麻痺足の推進力を確保できることで歩幅が左右対称に近づきます。左右対称に近づくことで歩行速度向上していきます。

・股関節伸展できることが大切(筋力だけで推進力をあげるのは大変)

推進力を上げていくためには、足関節底屈筋の力が必要です。しかし底屈筋の力を最大限に上げていくことには限界があります。そのため歩幅を確保するためにも股関節伸展を作っていくことが大切となってきます。股関節伸展するためには足関節背屈できないと、股関節伸展できません。

・麻痺足推進力と下腿三頭筋の相関は高い

しかし、麻痺足の推進力をあげることに関して、足関節底屈筋の力を出せるようにすることは文献的にも相関が高いです。この事実は次のようなことを物語っています。

片麻痺を呈した方は股関節伸展制限はない人が多いかもしれない。」


規定因子


歩行速度を決定する要素は以下のもので決定されます。

1股関節屈曲筋力 2足関節底屈筋力 3下肢感覚           この因子で最大歩行速度は85%説明がつきます。


立脚後期を可能にする


正常は?

そもそも立脚中期や立脚後期がどのような状態かみていきます。

立脚中期では

・固定された足部上を下肢・体幹が前方へ推進

・足関節底屈筋の遠心性収縮

立脚後期では

・前方への推進

・股関節、膝関節進展による体幹の前方推進


股関節伸展しないと?

股関節が伸展しないことで以下の3つが起こります。

1、ステップ長確保できない

2、前方への推進が阻害

3、遊脚のための弾性エネルギー確保困難(腸腰筋腓腹筋・ヒラメ筋) 


股関節伸展できない?何ができなくなる?

立脚後期で股関節を伸展することは重要な要素です。その股関節伸展は何ができないことで起こってしまうのでしょうか。

体幹直立位での股関節伸展ができない

股関節屈曲拘縮、股関節屈筋の過剰緊張、足関節背屈制限、腓腹筋の筋力低下(二次的制限)、股関節痛の存在などの理由があります。このようなものが存在することで体幹直立位での股関節伸展は不可能となってしまいます。

・立脚後期で股関節屈筋の完全な遠心性コントロールが臨床上極めて重要な要素(Eustace 2007

股関節の伸展ができることは股関節屈筋が引き延ばされることでもあります。十分に引き延ばされることで振り出しをスムーズにしていきます。

片麻痺では遠心性収縮できないことが共通点

歩行には数多くの遠心性収縮によりコントロールされている筋が存在します。特に腸腰筋やヒラメ筋は代表的です。これらの筋群が遠心性収縮を行えないことで、不随意的に働く歩行動作が随意的になってしまいます。

腓腹筋の収縮で重心の上方修正、滞空時間を稼ぐ

腓腹筋が立脚終期にしっかりと働くことで、重心が低下するのを防ぐことができます。収縮しないとそのまま重心は落ちることとなり、上下方向の動きが大きくなり大きなエネルギーを必要とします。位置エネルギーが大きくなるとその分運動エネルギーも必要となってきます。

 

どうすればいい?ステップ動作のやり方。

ここではステップ動作を中心にお伝えします。

 

ステップ動作のメリット

ステップ動作を行うにあたり、以下のようなメリットがあります。このようなメリットは歩行には必須となってくる要素ばかりです。ステップ台一つで大きな場所を取る必要もなく行うことができる練習方法です。

腸腰筋とヒラメ筋が遠心性収縮しやすい

・立脚後期の下肢の機能は、ステップ台に上る際の後脚の機能と同じ

・支持基底面が出来上がっている中で重心移動ができるので、歩行より制御が楽

・前脚・後脚がCKCになるから麻痺足の底屈筋群を緩めやすい 

ステップ動作の方法

ステップ台:

20cm台がベター、10cm台からでも練習可能

条件:

骨盤前傾させる

坐骨結節を持ち上げる(後脚の膝を曲げない)

①前脚の膝を屈伸する

    or

②後脚の足関節底屈させる

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ステップ以外の練習方法もご紹介

壁ドンエクササイズ・足部の柔軟性確保・踵上げ

壁ドンエクササイズ

ヒラメ筋:遠心性トレーンニング

・指先がつくくらいの壁からの距離で手首を背屈

・股関節屈曲を徹底的に排除

体幹が直立位に保ちながら行なっていく。


戻すのが難しい場合は。

・手では絶対戻さない。戻すと体幹屈曲してしまう。

・身体から戻す

・足関節底屈使ってもいい

・上に伸びるイメージで戻る。

 

足部の柔軟性確保

・足部をボールに乗せる⇨股関節伸展を入れながら行う。

片麻痺患者の足部はとても硬くなっていきます。特に下腿三頭筋以外もMP関節同士の間も硬くなっていきます。動かないことで立脚終期を作りづらくもなります。またアーチが潰れることで立脚期は安定します。その足部が潰れることができないと不安定になります。

 

踵上げ

・下腿三頭筋のトレーニング(求心性)

・下げる時には遠心性のトレーニングになり立脚後期のトレーニングにも繋がり筋力UPもできる

歩行時には遠心性の運動が必要となります。筋力がある中でコントロールが必要です。そのためには求心性で筋を出力できることが前提条件です。遠心性のトレーニングをする時には、求心性で発揮できているかも確かめる必要があるでしょう。

 

体幹を直立位に保つ

脳卒中患者は上半身重心が股関節の前方にある

脳卒中患者は過緊張であったり、コントロールできないため股関節の前方に重心が常にあります。そのため体幹を支えるために股関節伸筋を使ってしまいます。すでに使っている股関節の伸展きんをさらに伸展させることができず発揮できない状況になっています。

 

・足背屈と股関節伸展が不可欠

直立位を保つためにも立位保持した際に足関節背屈と股関節伸展ができる必要があります。これを実現させるためにステップ動作の練習が必要となります。

 

・随意的な運動は足関節底屈、膝関節伸展、股関節屈曲が組み合わさる

運動を行おうとして意識的に膝を伸ばそうとした時、足関節の底屈と股関節屈曲が組み合わさります。遠心性のコントロールができなく立脚を作れないと膝崩れを恐れこのパターンが出ることがあります。これは重心が前方にある状態であるので股関節伸展を発揮できない状況です。

 

Hip lumber complex stabilizer(腹横筋、多裂筋、腸腰筋、内閉鎖筋、骨盤底筋)

体幹を直立位に保つためには、インナーの機能や股関節の機能は当然大切です。この機能が確保されていないと股関節伸展と足関節背屈を出すことがそもそもできなくなってしまうので、機能評価を行なっていく必要があります。


以上、「ステップ動作を用いて立脚後期を可能に。(片麻痺患者に着目して)」お伝えしました。患者さんの生活範囲を広げるためにも、歩行速度が必要ですし、歩行速度をあげるためには推進力が必要。その推進力のためには体幹伸展位で股関節伸展を行えることが必要。そのためにステップ動作を用いて介入方法をお伝えしました。実際に行うと患者さんにとっては大変な練習です。しっかりコミュニケーションを取りながらぜひ明日から行なってみてください。