胸水貯留:産生の3つの要素
胸水とは?
胸膜腔には健康人でもわずかな胸水が存在していて、
呼吸をする際に肺と胸壁との間の抵抗を減らす「潤滑油」として働いています。
胸水は
主に壁側胸膜の毛細血管から間質液が染み出すことで産生され、
主に壁側胸膜のリンパ管、臓側胸膜に吸収されます。
吸収が減少したり産生が増加したりした場合には、
胸水貯留(胸に水がたまった状態)になります。
リンパ管の閉塞などで胸水貯留することがあります。
胸水の産生は主に
毛細血管透過性、静水圧、膠質浸透圧の3つの要素に影響されます
(Starlingの法則)
何らかの原因により産生と吸収のバランスが崩れると
胸水が過剰に貯留します。
胸水貯留のメカニズム
①右心不全による静脈圧上昇のために胸水の吸収が低下する場合
②左心不全による肺静脈圧上昇のために生じた肺うっ血が高度になって、リンパ管からの排出を越えてしまい、胸膜腔への胸水産生が増加する場合
いずれにしても漏出性胸水のはずです。
漏出性胸水
肺の病気以外が原因のことが多いです。通常は両側に見られ淡黄色透明です。
滲出性胸水(しんしゅつせい)
:感染(細菌、結核など)、肺がんや胸膜に発生する悪性中皮腫といった腫瘍、
関節リウマチなどの膠原病などによる胸膜炎があります。
通常は片側性で、悪性の場合は血性になることが多いです。
低タンパク血症
心不全に低栄養状態や肝障害などが合併し低蛋白血症となると、
浸透圧低下による胸水貯留が加わることになります。
この場合も
胸水は漏出性ですが、
利尿薬など心不全治療だけでは胸水が改善しないことがあります。
そのような場合は、
アルブミン補給など低蛋白血症に対する治療も併せて行なう必要があります。