足関節からみた膝関節
はじめに
立位や歩行の際には唯一地面と接する部分は足関節です。
足関節の機能が障害されることでどのような膝関節の機能に影響するのでしょうか。
足関節・足部の有する機能
足関節・足部のもつ機能として次の3つがあります。
この機能が障害されることでストレスが生じたり、不安定性を助長することとなります。
①身体の土台としての可動機能
下腿の傾斜の制御
外側傾斜が制限
・外側では圧縮ストレス
・内側ではMCL、縫工筋、薄筋、半膜様筋に過剰ストレスが加わることになります。
外側傾斜が過剰
・内側では圧縮ストレス
・外側では、LCL、腸脛靭帯、大腿二頭筋に過剰ストレスが加わることになります。
下腿の傾斜は主に距腿関節・距骨下関節を中心とした複合的な可動に寄って決まります。
そのため制限が生じれば、近位に位置する膝への負担を大きくなります。
②衝撃吸収・支持機能
足底アーチ関連
アーチ構造
足関節・足部の機能として重要なのが、アーチ構造です。
アーチ構造は剛性と柔軟性という相反する機能が要求されています。
縦アーチ
静的サポートとして、足底腱膜、長足底靭帯、スプリング靭帯があります。
これらを切除すると、アーチの剛性が25%低下すると報告されています。
横アーチ
大切なのが「クロスサポートメカニズム」であり、関節の安定性に関与しています。
長腓骨筋と後脛骨筋によるクロスサポートメカニズムにより保持されています。
アーチの保持には、足外在筋の関与や足内在筋の要素が重要です。
特に第2~5指の底屈エクササイズは内側縦アーチの高位を増加させます。
つまり底屈位での足指屈筋の評価も重要です。
距骨下関節回内に伴うアーチ下降のメカニズム
回内すると、距骨と踵骨の位置関係が上下から左右の関係となります。
また立方骨の位置が変化してアーチ下降可能となります。
アーチ下降すると距骨が関節面から逸脱し、この距骨頭の一部を底側踵舟靭帯が支えます。
(=この底側踵舟靭帯が衝撃吸収をしている)
すぐこの下に後脛骨筋があり、張力が低下すると内側縦アーチが降下すると言われています。
長母指屈筋
回内した状態でのアーチ下降を遠心性に支えます。
背屈方向から底屈方向への弾性を作り出すキーマッスルです。
適度な緊張が足部や足関節の衝撃吸収や支持機能に関与しています。
MP関節の伸展可動域
MP関節伸展方向への可動ができることで、足底腱膜に対して伸張ストレスを与えることとなります。
そこを起始する短指屈筋や足底方形筋などのアーチを保持する張力に影響をきたします。
この張力は歩行路の踏み返しや衝撃吸収に役に立っています。
荷重下の条件においては、距腿関節の底屈の可動性、距骨下関節の回外可動性がなければMP関節伸展可動域を得ることはできません。
十分に患側に荷重できなければ、立脚期は短くなりそれを繰り返すことで、距腿関節は十分底屈せず歩行周期を終えてしまいます。
すると底屈制限に起因したMP関節の伸展制限も起こってきます。
踵部皮下組織
Langらによると「踵部皮下組織は圧迫荷重に耐えられるように作られている」と述べています。
その踵骨内側突起皮下1.6cm程度存在します。
これが損なわれると膝関節の衝撃が増強することが考えられます。
前後方向は前方へ流動しながらたわみ、踵骨が後方へ滑走すると言われています。
内側荷重を行なった場合、踵部皮下組織は踵骨に対して外側へシフトします。
踵部皮下組織の柔軟性が低下すると、衝撃吸収能や踵骨の傾斜量に影響し、膝関節の衝撃を助長します。
③路面状況や支持基底面の状況を伝達するセンサー
常に地面と接し、姿勢制御を行なっています。
足底からのフィードバックは前庭からのよりも早いと言われています。
また足部内の各関節で情報の伝達化が細分化されています。
足部からの求心性情報に隔たりが生じた場合(足圧が限局された場合)
限られた知覚情報に準じた姿勢制御となり、運動の自由度が減少することが考えられます。
終わりに
足部の衝撃吸収機能が低下すれば、膝関節への衝撃は増加します。
足部の支持機能が低下すれば、膝関節への不安定性が増加します。
足部のセンサー機能が低下すれば、制限の中での姿勢制御となり運動の自由度が減少します。
このように膝と足では密接な関係があります。
膝を見る場合でも、足の状態は特に観察して治療を行なっていくことが良いでしょう。